おかんの読書感想記その25:「ジェントルマン」 山田詠美

山田詠美先生の筆力が落ちたのでは、ない。
私の感受性が鈍化したのだ。




と、思うわ。


最近、小さい字が見づらくて…。
本を読むのも一苦労です。
本を読んではいても、ブログに感想書いてなかったな~。
ということで、
20代、むさぼるように読んだ、山田詠美センセの新作。
とはいえ、発刊は去年終わりだったかな…。
電車のつり広告や新聞の広告で、めちゃくちゃ期待した作品です。

成績優秀、眉目秀麗、だれにでも優しく、嫌みがない正義感を表したりして、周りの人々に愛される、
まさにジェントルマンの「漱太郎」。
主人公の夢生は、高校生の時から、彼のその完璧なジェントルマンたるスタイルに違和感を持っていたが、
ある事件をきっかけにして、漱太郎を愛することとなり、その愛の果てに衝撃的な結末を迎える…。
と、まぁこんな感じです。

物語の出だしはステキなんです。
すごく有名な写真。
米国、ローリングストーン誌の表紙、ジョンとヨーコの写真。
だれもが一度は目にした事があると思います。

おかんの読書感想記その25:「ジェントルマン」 山田詠美_f0054556_14105273.jpg


今、自分はこのような状態にある。
と、いうところから、夢生のモノローグで物語が始まり、この先を読むのにわくわくしましたわ。

ただ、結論からしますと、
今のこの実際の世の中での「悪」を見ておりますと、
漱太郎の悪など、子どものいたずら程度に感じない。
そういう風に、自分の感覚が鈍くなってしまったのだと思いました。
なので、ピカレスクロマンと思えない。
そして、同性愛というのも、もはや陳腐な感じ。
同性愛の世界と言う事でいえば、(読んだ事が無いのでなんとも言えませんが、)もしかしたら、BLの同人誌の薄い本の方が、もっと文学的なのではあるまいか?
と、思ってしまう。
無理やりな性行為も、同性愛も、近親相姦も、うわべだけをさらっている感じがしました。。
いや、刺激的すぎたら違う分野になってしまうので、純文学ならこの程度がほどほどなのかな?
山田詠美センセは、世間一般ではダメ男となってしまう男の人を、ダメな部分も含めて、ものすごく魅力的な人間に描いていらして、そういうところがステキだと思っていました。
やはり、世間一般で良い男とされる男の描写が今一つ筆がのらない感じ。
魅力的に見えないんだなぁ。






ジェントルマンの裏側の悪が、
無理やりの性行為って???

合意していないのに、むりやり性行為に及ぶというのは、憎むべき卑劣な行為ではあります。
実際被害に合うと、心の傷たるものいかばかりか?と思います。
皆に好かれる漱太郎ですから、彼に近寄る女性は、少なからず好意を持っているわけで、
いきなり、見ず知らずの人や嫌いな人に拉致されてという訳ではないという点で、「悪」としてのメーターが上がらないのです。(私の中で)
もっと、人心を掌握し、マインドコントロールをして支配する悪魔的な悪(尼崎の角田美代子容疑者など)でないと、漱太郎の悪なんて、ちょっとしたわるさに感じてしまうというのは、
被害者と同じ女性なのに、シビアすぎるでしょうか。


その漱太郎を愛する夢生が下した結論とその行為が、
お花用の鋏でアレを切るって~~~~~~。
なんだかなぁ…。

この作品の中で唯一感情移入できるのが、圭子です。
彼女の愛については、貴女も辛いよね…。と声をかけたくなります。

私は山田詠美センセの作品では、「色彩の息子」と「トラッシュ」が大好きで、
人を愛するという事について、深く考えさせられたのでありますが、
やはり、今読むと又違った印象になるかもしれませんね。

とはいえ、この作品も文章がきれいで、とても読みやすく、
いろいろな場面が文字から頭の中で形になり、
あっという間に読み終える事ができました。

ただ、山田詠美センセの文章で必ずでてくる

~~は△△で××では、ない。

という、否定の前に句読点をつけて強調するスタイルは、
1作品に1回程度で良いのでは?
あまり度々でてくると、これまたくどいなぁ~と思ってしまいます。
by jumbo0317 | 2012-12-18 14:42 | 本・読書 | Comments(0)

じゃんぼなおかんです。食い意地こそが私の原動力。食べ物のお話、旅のお話、日々のあれこれを綴ります。御連絡はこちらにお願いいたします。   jumbo0317@yahoo.co.jp


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